私が知る限り今から10年ほど前でしょうか…
突如として現れた「犬は狼が先祖だから肉食獣。良質でお肉たっぷり高タンパクなフードが生物学的に正しい食事」と銘打って、高タンパクフードが一気に流行りました。
そっか、確かに狼は肉食だ!狼が祖先だから犬の食事は肉たっぷりが良いよね、納得!
そう思った、情報に敏感な飼い主様達がこぞって我が子にお肉たっぷり高タンパクフードをあげ始めたんです。
実は私もその1人。
その一見至極真っ当に思えるその情報を信じて、当時学生だった私はお肉たっぷりの某フードを好んでうちの子たちにあげていました。
それが本当に犬たちにとって良いと思っていたんです。
そしてめちゃくちゃ高いんですこれが…
高いフードはそれだけ原材料にお金かけてるんだ、良いフードなんだと思ってた当時の私は本当に勉強不足でした😅
話は逸れますが、グレインフリー(穀物不使用)フードもその勢いにのってあっという間に穀物は悪の代表のようになりました。
グレインフリーのフードはまた別の機会でお話ししますが、果たして犬は狼と同じ肉食獣なのでしょうか?
違う言い方にします。
犬と狼の食事の考え方は同じで良いのでしょうか?
今日はこの問題についてフォーカスします。
[vc_text_separator title=”犬の祖先って” style=”dotted”]
犬の祖先は狼と言われています。
狼の中から人に懐く個体が現れて、それが犬の祖先になったと言われています。
あるフードは、犬と狼のDNAは99.8%一致する。
だから生物学的に正しい食事はこれです、といううたい文句で販売しています。
高タンパクフードをあげ続けることによるデメリットも伝えずに。
別に悪いフードだとは思いませんが、尖ってるフードならどの子にでもこれが正しい食事です、というような宣伝はしない方がいいと思うんだけど…そっちの方が良心的で信頼できるし。
まずDNAがほぼ一致するからと言って、生物学的にうんたらかんたらってのはちょっと暴論すぎると思います。
まず生物学的に同じってどういうこと??
言葉だけ読んだらなんとなく意味が分かるけど、でもどういうこと?
この言葉を出されたら妙に納得してしまいそうになりますね。
[vc_text_separator title=”DNAが99.8%一致してたらほぼ同じと考えていいの?” style=”dotted”]
こんな記事を見つけました。
チンパンジーと人のDNAが99%一致してるということは皆さんどこかで聞いたことがあるかと思います。
じゃ、ほぼ人じゃん!1%違うだけでこんなに人とチンパンジーは違うのか…と私はそれを知った当時は凄く驚きました。
でも人とチンパンジーのDNAの99%一致はらせん状のDNAのごく一部の配列だけが違っているように思いますが、実はそうでは無いんです。
人とチンパンジーでは遺伝子情報には実はかなり違いがあって、でも共通する部分も確かにあるそうで。
共通する部分は違いを比べることができるけど、大きく違う部分はどう比べればいいんだろう?
う~ん…
じゃあ大きく違う部分は切り離して共通してる部分だけ比べてみよう!
という考えが人とチンパンジーのDNAの99%一致という結果になったそうです。
たぶん犬と狼のDNAが99.8%一致するってのはこの考え方と一緒ではないのかと思います。
人とチンパンジーだけその考えを当てはめるのもおかしな話ですしね。
ちなみにバナナと人では50%DNAが一致するそうですよ!
(逆に50%も一致することにびっくり)
そう考えると、あぁ犬と狼は似てるけどやっぱ違う生物だねと納得できますね。
[vc_text_separator title=”消化能力の違い” style=”dotted”]
犬と狼とではその消化能力にも大きな違いがあります。
犬は狼より効率的にでんぷんを消化できる能力を持っていると、あの英科学誌Natureの論文で発表されています。
https://www.nature.com/articles/nature11837
犬は口内にでんぷんを消化する消化酵素アミラーゼを持っていませんが、膵臓から出るαアミラーゼというアミラーゼの前駆物質が出てしっかりと消化・吸収されることが分かっています。
でんぷん(じゃがいもや穀物類)をもし生の状態であげたら確かに消化できません。
しかし、火を通すことによってα化(糊化)し消化・吸収がとても容易となります。
このα化とは、私たちが毎日主食として食べてるお米を例にするととてもわかりやすいと思います。
お米を生で食べる人はきっといないでしょうが、もし生で食べてしまったらお腹を壊してしまいます。
だから火を通してα化(糊化)して消化しやすいように加工してるんです。
ドッグフードの製造工程は必ず熱が加えられているので、フードに含まれる炭水化物は犬にとって消化が容易と言えるでしょう。
(だからと言ってたんぱく質よりも炭水化物ばっかりあげてよいかと言われればそれはまた別の話)
この消化能力の違いからも犬と狼とはやはり違う生き物として考えるべきなのではないでしょうか。
前述した、遺伝子情報がほぼ一緒だからといって犬にとって狼の食事(野生の食事)が理想的であるというのはいささか暴論であるように感じます。
[vc_text_separator title=”そもそも狼の食事って…?” style=”dotted”]
さて、ここまでは狼は肉食獣という前提で話を進めてきました。
肉食獣というと、お肉しか食べないんだなと思われがちですが実はそうではありません。
草食動物を獲物としている肉食獣は、狩りで獲物をとらえたらまず内臓から食べます。
そこには草食動物が食べた草や種子、果物などが消化しやすい状態で胃の中に入っています。
そこを1番最初に食らうわけです。
栄養たっぷりです。
間接的に草食動物が食べたものを肉食動物もとることによってバランスの良い食事をしていると言えます。
そして肝心の狼。
犬の祖先と言われているハイイロオオカミは実は雑食性を持っていたことが分かっています。
(これも前述の論文に記載あり)
獲物がとれないときは果物や種子などを食べていました。
そもそもの祖先が雑食性を持っていたにも関わらず、犬は肉食獣だ!とその言葉だけが独り歩きしてしまい、日本の小型犬に過度に負荷を与える食事がよしとされたことは悲しい事実です。
お肉たっぷりのフードが悪いわけではありません。
問題は「そればっかり」あげることです。
犬は狼が先祖だから肉食獣だ、という考えが根底に根付いていると
必然的に選ぶものが全部高タンパクフードになりがち。負のスパイラルに突入です。
(なぜそうだと分かるのか?私も昔その消費者の1人だったからです)
この選ぶものが全部高タンパクフードになりがち、な部分が現代の日本の室内飼いの犬たちにとってとても危惧すべき事態だと考えています。
飼い主様が気づいたときには、大切な愛犬の内臓は疲弊しきっているかもしれません。
あの時、正しい物の見方を教えてくれる専門家が傍にいたらなぁ…なんて思ってしまいます。
※繰り返しますがそういったフードが悪いわけではありません。
素材の調理の仕方や鮮度などもすごくすごーくこだわってるだけに宣伝の仕方がもったいないな、と感じてしまうだけなんです。
ドッグフードはバランスが大事なんです。
高タンパクフードも別にあげても全く問題ないです。
問題なのは「そればかり」をあげること。
人間でも毎日毎日ステーキを食べ続けて果たしてそれが健康に良いでしょうか?
逆でも大丈夫です。
健康に良いからと野菜ばっかり毎日食べ続けることは果たして本当に栄養バランスがとれているのでしょうか?
お肉が多い日があれば、粗食な日もある。
それを全体的に見て栄養バランスを整えるということではないでしょうか?
人で考えたらいとも簡単にわかるのに、犬の事になるとなぜか「こればっかりあげる」が横行しています。
ポコアポコに来てくださってるわんちゃん達は健康で長生きして欲しいので、このフードが良い!あのフードが良い!とお伝えすると共に、わんちゃんの根本的な食事の考え方を共有できたらなと思っています。
だって飼い主様が選んだもの、飼い主様が与えるものしかわんちゃん達は食べれませんから✨
[vc_text_separator title=”話はそれましたが最終結論” style=”dotted”]
とは言っても、犬にとって1番大事な栄養素はたんぱく質です。
それも動物性たんぱく質=お肉が多い方が良いのは否定しようも無い事実です。
雑食性があるとはいえ、人間よりもお肉を多くとらなければなりません。
以上の結果から、犬は肉食獣ではなく
肉食寄りの雑食性を持っているという結論が現在のスタンダードでしょう。
ここま読んでくださり誠にありがとうございます😊✨
次回は高タンパクフードをあげ続けることによる弊害について書きます!