先日から店頭に置かせていただいていた募金箱に、たくさんのご協力をありがとうございました。
おかげさまで、55,836円が集まりました。
お預かりした募金は全額、被災したペットの支援のため、認定NPO法人「日本レスキュー協会」へ寄付いたします。
災害救助犬の派遣や、被災したペットの支援を行っている団体です。
一人ひとりの気持ちがこうして形になって、本当にありがたいことだなと思います。
スタッフ一同、心よりお礼申し上げます。
そして、この募金をきっかけに、どうしても一緒に考えたいことがありました。
「もし、犬と一緒に被災したら」
という話です。
「防災セット、ひとつ買ったから安心」の落とし穴
正直に言うと、私も最初はそう思っていました。
犬用の防災セットを一つ買っておけば、なんとかなるだろう、と。
でも、今回かなり本気で調べました。
環境省のガイドライン、福岡県や各自治体の資料、獣医師会の発信。
それから、東日本大震災・熊本地震・能登半島地震の公的な記録や、実際に犬と被災した飼い主さんの体験談まで。
読めば読むほど、はっきりしてきたことがあります。
大事なのは、以下でした。
・命をつなぐもの
・(パニックで)逃がさないためのもの
・避難先で周りとトラブルにならず暮らすためのもの
・断水・停電・暑さ寒さをしのぐもの
この4つが揃って、はじめて「備え」なんですよね。
市販のセット1袋には、ここまで入っていないことがほとんどです。
そろえるものリスト【重要度つき】
犬を飼っている家庭でそろえておきたいものを、重要度つきで一覧にしました。
| 重要度 | 用意するもの | なぜ必要か |
|---|---|---|
| ★★★★★ | ふだんのごはん 7日分+ | 支援物資はすぐ届かない。療法食はなおさら手に入りにくい |
| 常温ウェットフード(レトルト・缶詰)7日分+ | 食欲が落ちても食いつきやすい。賞味期限も約1年 | |
| 飲み水 7日分+ | 断水は犬にも直撃。ふだんの水を多めに | |
| 常用薬・療法食 7日分+ | 災害直後は病院も物流も止まる | |
| ハードクレート | 避難先で必要。犬の「安全な個室」になる | |
| 首輪+ハーネス+伸びないリード | パニックの逸走を防ぐ(伸縮リードは使わない) | |
| 迷子札・鑑札・注射済票・マイクロチップ | 室内犬でも逃げてしまう | |
| ペットシーツ+うんち袋+防臭袋 | 排泄の処理は飼い主の責任 | |
| ★★★★☆ | タオル・ウェットシート・ドライシャンプー | 断水時に体を拭ける |
| 使い慣れた毛布 | 匂いで落ち着く | |
| 飼い主と写った写真・医療情報 | 迷子捜索や預け先で必要 | |
| 使い捨て食器・紙皿・ポリ袋 | 食器が割れても対応できる | |
| ガムテープ+油性ペン | ケージ補修・名札づくり | |
| ★★★☆☆ | 折りたたみ食器 | 持ち出しに便利 |
| ポータブル電源 | 停電時のスマホ充電・情報収集 |
★★★★★=命に直結。何を差し置いても。
★★★★☆=あると、避難生活がぐっとラクになる。
★★★☆☆=できれば。
環境省のガイドラインでも、フードや水は「少なくとも5日、できれば7日分以上」が目安です。日本で犬と暮らすなら、【7日】を最低ラインに考えておくと安心です。
「支援物資が来るから大丈夫」——その油断が、いちばん危ない
ここは、いちばんお伝えしたかったところです。
大きな災害の初期は、ペットフードや水の支援すら届きにくい。
これは環境省の資料でも、はっきり書かれています。
東日本大震災のときも、ペット用の物資は配送そのものが難しくて、現場ではペットシーツ・その子に合ったごはん・療法食・ハードキャリー・中大型犬用のリードなどが足りませんでした。
だから特に、
腎臓病のごはん、アレルギー対応食、消化器の療法食。
毎日の心臓の薬や、てんかんの薬。
こういうものを使っている子は、一般の子以上に、備えが大事です。
環境省のガイドラインでも、常備薬や療法食は多めに備えておくことが勧められています。
リストだけじゃ伝わらない、「これに救われた」もの
表の中でも、とくに伝えたいものが2つあります。
まず、クレート。

環境省でも獣医師会でも言われているのが「日頃からクレートに慣れておくこと」。囲われた空間は、犬にとってむしろ落ち着ける場所です。
避難所でも車の中でも、そこが【安心できる個室】になる。ただの「運ぶ箱」じゃないんですよね。
ふだんから扉を開けて、なかでごはんを食べたり眠ったりして使っておくと、防災グッズとしての価値が一気に上がります。
そしてもう一つが、常温で置けるウェットフード。

災害のときって、慣れない場所や物音で、犬がごはんを食べなくなることがよくあります。
その点ウェットフードは、カリカリより食いつきがいい。においも立つし、やわらかいので、食欲が落ちた子でも口をつけてくれやすい。
しかもレトルトパウチや缶詰は、賞味期限が1年くらいあります。だから、備蓄の【ローリングストック】にもぴったりなんです。
「ローリングストック」って?
ごはん・水・ペットシーツは、この【ローリングストック】で備えるのがおすすめです。
ふだん使うものを少し多めに買って、古いものから使い、減ったら買い足す。
じつは私も、レトルトのウェットフードを多めに買い溜めして、古いものからあげて、減ったら買い足しています。
そして、いざという時に食べるのが【いつものごはん】。食べ慣れた物なら、犬も安心して口をつけてくれます。
伸縮リードは使わない
災害のときの犬って、いつもの精神状態ではありません。
後ずさりする。
急に走り出す。
大きな音で飛び上がる。
いつもなら抜けない首輪から、するっと抜ける。
だから、【伸縮リードは使わないでください】。

とっさに短く持てなかったり、急に伸びてしまったり。パニックの場面では、正直むいていません。
使うのは、伸びないリード。
できれば、首輪とハーネスの両方に付けておくと安心です。それぞれにリードを付ける方法を案内している自治体もあります。

それと、これは被災した方ならではの発想で、なるほどと思ったんですが――
リードを、家の複数の場所に置いておく。
玄関、寝室、犬がふだんいる部屋。
地震で家具が倒れると、そもそも玄関の防災袋までたどり着けないことがあります。安い予備リードを何本か、あちこちに置いておくと、揺れの直後すぐに確保できる。
これは、私もかなりいいなと思いました。
じつは「物」より大事なことが、3つあります
調べれば調べるほど、強く出てきたのがこれです。
① クレートに入る練習
クレートを持っていても、その子が入れないなら、防災用品としてほとんど機能しません。
ふだんから、扉を開けて、なかでごはんを食べたり眠ったり。
それだけで、いざという時の安心がまるで違います。
② 室内でトイレができること
台風、大雨、がれき、道路の冠水。
「うちの子は外でしか排泄しません」は、災害時、かなり大変です。
③ いざという時の預け先
親戚、友だち、犬友、動物病院、ペットホテル。
「物資」だけではどうにもならない場面って、実際にあるんです。東日本大震災でも、犬友さんとのつながりに助けられた、という声がありました。
「避難所に行けば、犬もなんとかなる」の大きな勘違い
ここ、勘違いしている人がとても多いです。
同行避難というのは、犬を連れて、安全な場所まで一緒に逃げる【行動】のこと。
その先の避難所で、犬と同じ部屋で過ごせるかどうかは、また別の話なんです。
施設によって、飼い主と同室だったり、別室だったり、屋外だったり。
能登半島地震では、受け入れ体制が整っておらず、ペットお断りや、避難所での苦情が出た事例も記録されています。
だから、
「避難所へ行けば、犬もなんとかしてもらえる」ではなく、
「犬の生活セットを丸ごと持って逃げる」
くらいの感覚が、現実に近いです。
「一から全部そろえるのは大変」という人へ
「一から全部そろえるのは、大変そう……」
そんな飼い主さんに、私が実際に持っているものを一つだけご紹介します。
ペット業界のメーカーさんたちが集まって、被災地の調査をもとに作った BOUSAI GO BAG(たかくら新産業) というバッグです。
中身は、防災用のマイクロファイバータオル、うんちが臭わない袋、リード+カラビナ、QRコードの迷子札、体を拭けるボディタオル、消臭除菌スプレー、折りたためるウォータートレイ、の7点。

犬にも猫にも使えて、人用の防災袋のすき間に入るくらいコンパクトなのもいいところ。
そして、ここがポイントなんですが――
【ごはんや水は、あえて入っていない】んです。
まさに、この記事で書いてきた通り。
食べ物や水は、その子に合わせて【自分で足す】のが前提になっています。
だから、こういうバッグで機能的な小物をそろえて、そこにいつものごはん・水・お薬をローリングストックから足していく。
これがいちばん、現実的だなと思います。
久留米にお住まいの方へ。じつは一歩、進んでいます
久留米市では今、災害時にペット同伴専用の避難所を、最大3か所ひらく仕組みが用意されています。
ただし、開設場所は災害の状況で変わりますし、ケージ・糞尿袋・ペットフードは飼い主が持参するルールです。
防災というと、つい「いかにも非常用」の特別なグッズに目がいきます。
でも、実際に被災した方が助けられているのは、案外、毎日使っている地味な犬用品なんですよね。
P.S.
募金にご協力くださったみなさん、本当にありがとうございました。
こうして集まった気持ちを届けられること、そして、その流れで「うちの子の防災」を一緒に考えられること。
どちらも、お店をやっていてよかったなと思う瞬間です。
この記事が、いつか来るかもしれない「その日」の、小さな備えのきっかけになればうれしいです。
